Notionでは、特に組織の規模が大きくなっていく場合に、情報を持っているのは誰か、情報を必要としているのは誰か、複雑性の高い状況における情報の適切な流れなど、多くの時間をかけて情報について考えています。
先週、私たちはFullStoryの方々と話し合いました。そこでは、FullStoryのプロダクト担当SVPを務めるAgata Bugaj氏と、Notionの前最高プロダクト責任者であるMadhu Muthukumarという、規模拡大を熟知している2人の目を通して、知識の伝達について検討してもらいました。
FullStoryは、デジタルエクスペリエンス分析のためのプラットフォームです。Bugaj氏が入社した2018年10月以降、従業員の数は100人から600人に増加しました。Notionも同様の歩みを重ねてきたため、Bugaj氏の知見はとても共感できるものでした。
それでは、急成長する企業はどのようにその勢いを生かして成功しているのでしょうか。そのような企業は、複雑さを成長の力に変換しているのです。Bugaj氏の法則は「俯瞰し、パターンを読み、税金(コスト)をかけ、そして従業員の問題をツールで解決しようとしない」ということです。
毎日を俯瞰して全体像をつかむ
本質的に、成長には変化が伴います。企業は、混乱や多くの問題に直面しながら進化し、新しい複雑さを取り込まなければ、より大きな規模で運営することはできません。
チームの成長を率いるプロダクトリーダーは、日々の業務を俯瞰する時間を確保し、全体像を頻繁に確認しなければなりません。古い習慣は今でもチームにとって有益か、それとも害となっているか。今でもすべてのシステムが期待通りに機能しているか。おそらく答えは「いいえ」でしょう。よく整備された車でさえ、特に高速で走ることが多い状況では、いずれは点検や修理が必要になります。
日々の業務を俯瞰しなければ、手遅れになるまでサインに気づけない可能性があります。多くのリーダーにとって俯瞰とは「仕事をこなすこと」からの転換、つまり「コンテキストの共有」「質問をすること」「点と点とを結ぶこと」、あるいは、Bugaj氏が言うように「つなげるべき点があるのかを確認すること」に意図的にシフトすることを意味します。
Bugaj氏はこれについて次のように述べています。
「絶え間ない変化があるとき、考えるべきことがあります。それは、私たちの物事のやり方は今でも適切かどうかということです。また、コミュニケーションの方法や連携する方法、誰が決定に関与すべきかなどについても何らかの転換が必要かどうか、考えなくてはなりません」
変化を好む人はいません。抵抗を感じますし、馴染むまでに時間がかかり、面倒だからです。「企業を成功に導いた方法をなぜ廃止しなければならないのか」という疑問も湧いてきます。
プロダクトリーダーにとって、仕事をこなすことから分析にシフトすることは、ベンチに下がるのと同じように感じられるでしょう。プロダクトを生み出すことがコンタクトスポーツだとすれば、構築やリリースをしながら1年を通してトレーニングを積んでいるのです。そんな彼らにとって、俯瞰するというのは試合を傍観しているようなものです。
しかし大規模な成功を収めるためには、仕事をこなすことから、プロセスの優先順位付けや変更管理、従業員を導くことにマインドセットを転換することが極めて重要です。Madhuは次のように述べています。
「状況に関係なく高品質な仕事をする人材が必要です。そして、規模が大きくなったときに突然、ピアノを移動させることが最も重要な役割になるのです」
破綻のパターンを調べる
事前に変化を計画するのは不可能であり、その試みはほとんどの場合うまくいきません。ピアノを移動させるニーズが明確に発生する前に、どのようにしてチームは、ピアニストの代わりに運送業者を雇うタイミングを把握できるでしょうか。成長を導くリーダーは、異なるアプローチをとります。つまり、彼らは変化をもたらすべきタイミングを知らせるパターンを調べることで、適切な時期を予測するのです。
コミュニケーションの行き違いが頻発する、情報の欠如によってチームが混乱する、行動を起こすべき適切なコンテキストがないために中途半端な状態で多くの時間が費やされる、という問題が繰り返されるのが、よくみられるパターンの特徴です。破綻によって混乱や衝突が生じますが、変化の経験を積んだリーダーは、組織の問題を原動力にして、関心を持つべき理由や新しい習慣を推進すべき理由を従業員に示します。
バランスも重要です。Bugaj氏はこう述べています。
「プロセスの変化の時期が早すぎると、従業員からプロセスの変化について同意を得て、従ってもらうことが極めて困難になります。また、プロセスが複雑になりすぎるリスクもあり、その場合は従業員がプロセスに従わなくなります。確認事項が多すぎると、従業員は見ることすらしなくなります。そのため、適切なタイミングを把握するために、しっかりとそのシグナルを注視していなければならないのです。」
変化のためにコストをかける
Bugaj氏は、リーダーが前述のパターンに気づいたあとにすべきことは、パターンに名前を付けることだと説明しています。彼女はその理由について「名前を付ければ、解決すべきものとして認められるから」と述べています。組織が経験する問題の例として、ナレッジのサイロ化、進捗を管理するハブの欠如、マトリックス組織でありながら情報の流れが双方向であること、などが挙げられます。
しかし、さらに難しいのはここからです。解決策を実行する前に、リーダー陣が抱えている問題を組織全体に周知し、それが認識されている状態にしておく必要があります。変化をもたらすことは、同じ場所にとどまり、成長のプレッシャーに屈することよりも困難な場合が多いのです。変化を受け入れるべき理由を従業員に示すには、まず第一に、解決する価値のある問題があるのだと納得してもらわなければなりません。
物事を転換するということは、驚くほど困難に満ちたものです。これは、初期段階の企業には特に当てはまることです。なぜなら、小規模なチームには、管理者よりもプレイヤーのほうが多いためです。彼らは物事を進めるためにいるのであって、官僚主義に陥るために存在しているのではありません。しかし、単発の仕事は拡大しません。そのためすべての企業は、成長の過程で迎える転換期において、場当たり的な運任せのやり方を脱し、予測可能性と一貫性を重視するやり方にシフトしなければならないのです。
プロセスがほとんど確立されてこなかったチームに、変化を受け入れるだけでなく歓迎するように説得することは、規模拡大の初期段階にある企業にとって、成功と失敗の分岐点になりうるでしょう。Bugaj氏がこの変化を税金に例えて、成功する企業がビジネスを行う上で必要なコストであると考えるのはそのためです。
彼女は続けて次のように述べました。
「規模拡大を続けるにつれて、アプローチも変えていく必要はありますが、今までかけてきた税金(コスト)は考慮に入れることができます。従業員数が5人のときには、そのコストは生じません。特に対面の場合は『やあ、ジョン。今週はリリースはあるのかい?そうか、いいね、そうしよう』というように会話で物事を進めることができます。しかし従業員数が25人になれば、もう会話でカバーできる段階を過ぎているため、税金(コスト)をかけることが必要になります」
テクノロジーの前にプロセス、プロセスの前に従業員
規模を拡大するときには、解決策の候補を従業員、プロセス、テクノロジーで分類すると役に立ちます。この段階で企業がよく犯すミスが、適切な税金(コスト)は間違いなくテクノロジーなのだという、時期尚早な結論を出してしまうことです。
問題の原因はツールにあって、新しいテクノロジーを導入すれば、問題が軽減されるだろうと考えたくなります。実際には、テクノロジーは最も費用がかかるだけでなく、企業が新しいプロセスのテストを省略した場合は特に、過剰な解決策であることが多いのです。そしてもちろん、プロセスの前に考えるべきなのが従業員です。チームにとって不要かもしれない新しいプロセスを設ける前に、プロダクトリーダーは従業員とともに徹底的にプロセスを実行してみるべきでしょう。
Bugaj氏は次のように考えることから始めました。
「役割は明確かどうか、次に、プロセスの変化があるかどうかを把握します。そのあとで初めてツールについて考えます。なぜならツールの変更には高額な費用がかかるからです」
実際、FullStoryがNotionを選択するに至ったのは、まさに従業員、プロセス、テクノロジーのフレームワークで検討した結果でした。Bugaj氏のチームは問題について従業員に共有して認識を合わせ、その変化が実際に社内プロセスの改善につながるようにし、小規模なチームでNotionをテストしてその仮定を検証しました。
Bugaj氏は次のように述べています。
「私たちは最近、ロードマップをNotionに移行しましたが、これは一晩で完遂できたわけではありません。2~3か月かけて行いました。私たちのプロダクトオペレーションチームは、問題の本質を理解し、現在の状況でうまくいっていること・いないことを把握して、小規模なグループでNotionを検証するという、すばらしい仕事を成し遂げました。
また、彼らはMVPを策定し、「プロセスとツールの理想的な状態について繰り返し検討すること」に時間を費やしました。ここでBugaj氏は、次のように念を押します。
「状況の改善が可能だと判断するため、そして推進へ向けて、状況が大きく改善することを従業員に納得してもらうために示す例として、まず証拠を用意しなければなりません」
それが、規模拡大を進めるプロダクトリーダーにとっての重要な知見です。結果はさまざまなものになるでしょう。新しいツールが、常に正しい選択とは限りません。調査や観察によって、何が必要なのかについて重要な手がかりを得られます。そして、一番大切なのは従業員です。Bugaj氏は次のように述べています。
「パターンが観察されたら、何か違うことを取り入れるチャンスがありますが、どんな場合にも通用するような方法はありません。そのため、その方法が機能しているかを問い続ける必要があるのです」